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理想と偽装の向こう側

第11章 亀裂

お酌を利用して、奥の手に近付いた。



「元木さん、お疲れ様でした。」

「あ~渡辺さんお疲れ様です~!すみません、来てもらっちゃって~。」



珍しく、謙虚だな…。



「どう?準備進んでる。」

「はい~!情報誌やネット見ながら勉強ですよぉ~。」



「エステは?」

「いい感じです!最近、お化粧のノリも良くなりました!」



本当に幸せそうだ。



「彼氏さん、協力してくれてるの?」

「はい!忙しいけど、凄く優しいので、時間許す限り会って打ち合わせてるんですぅ~。」



そうなんだ…やっぱり兄弟でも違うよね…爪の垢でも煎じてくれないかな。



「司会の進行も二人が決めるの?」

「それは、須永さんが殆ど決めてくれる予定なんです!一応、希望を伝えてあるんで、上手く活かしてくれるように頼んでます。」



場の雰囲気か、結婚の余裕からか饒舌に彼女は、話し続ける。



「メールで打ち合わせ?」

「う~ん、須永さん今なんか忙しいみたいで、殆ど会えないんですよ~。けど、三人で時たま時間作って打ち合わせてます!きゃは!」



なる程…予想はしていた。



「へぇ~助かるね!本当に楽しみだね!」

「はい!」



この瞬間、『希望』が『絶望』にすり替えられ…



私は確実に『部外者』の烙印を押された気がした。




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