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理想と偽装の向こう側

第12章 板ばさみ

出て、行こう…。



出なきゃ…私なんか、ここに居られる資格なんてないんだ!



また、涙がボロボロ零れ落ちる。



とりあえず、着るもの着る感じで簡単に荷物を作り、いてもたっても居られずに、私はマンションを飛び出そうとした時…



「ガチャリ…。」



鍵を開ける音が響いた…。



えっ!小田切さん!?



「ただいま~。あっ、香織んどうしたの?荷物なんか持って…あれ、泣いてた?」



「小田…切さん…。ご、ご免なさい…。」



小田切さんは、いつもの優しい笑顔で私の顔を覗き込みながら



「なんか…理由があったんだろ?香織んは、悪くないよ。とりあえず、座ろう。」



穏やかに私を宥め部屋に戻そうとしたが、私はパニックになっていた。



「ご免なさいっ!ご免なさいっ!私、ここに居られない!居られる資格ないっ!」



一気に涙も流れ出す。 



「香織っ!!」



えっ…。



小田切さんは、私を抱き締めていた。



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