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理想と偽装の向こう側

第12章 板ばさみ

「落ち着いて…俺こそ香織んが不安な時に、独りぼっちにさせて悪かった。怖かったよね…。」



小田切さんの胸は広くて温かくって、私は少し落ち着きを取り戻した。



独りぼっちが怖かった訳ではない…私は小田切さんを失うのが怖かった…。



「小田切さん…帰って来ないから…もう、会えないのかなって…。」



「ははっ!それは無いよ。ちょっと片付けなきゃいけないことがあったから、思いの外時間かかって…ホント、ごめん。」



小田切さんは、私の背中をポンポンと優しく擦りながら



「俺から香織んを独りにすることは、しないよ…。こないだも言ったけど、香織んが独りになりたかったら、香織んが選んでいいから…。」



そう言って、抱き締める腕に力が込められた。



どうしよう…凄く嬉しい…。



こないだ嘉之と一晩明かしておいて、小田切さんの腕の中に居られることが、幸せに感じてしまう。




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