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理想と偽装の向こう側

第12章 板ばさみ

「香織~ん!」



小田切さんの呼ぶ声に、一気に現実に引き戻される。



「は、はいっ!」



部屋のドアを開けると、濡れた髪をタオルでガシガシ拭きながら、小田切さんが立っていた。



「夕飯どうする?香織ん、土曜日から余り食べてないんじゃない?」



キュンッ…何でもお見通しなんだね!
小田っち!



ヤバイ…優しさに飢えているのかも…目頭が熱くなってくる。 



「オム…シチュー食べます。」



「えっ!まだ、残ってるけど、大丈夫かな?」



「冷蔵庫に入れといたから、大丈夫かと…小田切さんと一緒に食べたいし…。」



「ははっ。楽しみにしてたしね。よしっ!温めよう!」



それから、小田切さんはシチューを温め直し、オムレツ部分の卵も少し足す感じで作ってくれ、私は簡単にサラダを作って、テーブルセッティングをした。



「香織ん、何か飲む?」



笑顔で聞いてくる、小田切さんに



「小田切さんは、何飲みたいですか?」



「う~ん、赤かな!」
「ふふっ…じゃあ、赤で。」



ワイングラスも用意する。



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