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理想と偽装の向こう側

第12章 板ばさみ

今度は安堵から、涙が溢れ出した。



「ふっ…ひっく…。」
「あ~!香織ん、凄いことになってる~。」



ハンカチを取り出し、極上の小田切スマイルで涙を拭ってくれた。



小田切さんに抱き締められたまま、ひとしきり泣いて、やっと落ち着いたのだった。



◎ ◎ ◎ ◎

小田切さんが、シャワーを浴びてる間、私は部屋で気が抜けていた。



「はぁ…恥ずかしい…。」



一気に色々起きたから情緒不安定になってたからって、ちょっと子供みたいだったな…六年間甘えられなかった分、溜まってたものが溢れてしまってるのだろうか。



小田切さん、甘やかすの上手いしな…。



ボムッ!と、頭から湯気が出そうなくらい一気に赤くなった。



ヤバイ…本当にドキドキしてきた。



私の涙で濡れてしまった、小田切さんハンカチ…。



口元に持ってきて、眼を瞑る…ちょっとマニアみたい?



…あれ…この香り…どこかで嗅いだな…。



普段の小田切さんからは、感じない…匂い…車で嗅いだ…何かのお香…。



その瞬間、脳裏に何かがフラッシュバックした…。


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