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理想と偽装の向こう側

第12章 板ばさみ

金曜日

「香織ん!今日は中華だよ!早く帰って来てね!」



今朝、小田切さんは親指を立てながら言っていた。



それにしても、色々作れて器用だな…そっちの道に進めるんじゃないかな?



今日こそダッシュだ!
私は鬼の様に、仕事を片付けた。



「やっぱり金曜のなべちゃんは気合いが違うよね!」



そう言う樋口さんと、出入口まで一緒に向かう。



「そう…かな。」
「なんかね~本当に楽しそうなんだよね~。」



そっか…分かるもんなんだな…。



余計、小田切さんへの気持ちを確信してしまう…。



「あれ~あの人さ、見たことあるよね?…あっ!モッキーのほら!須永さんだ!」



「…嘉之っ…。」



「そう!」



余らせた足を組むクセは変わらないまま、エントランスの壁に寄りかかっている嘉之が、目の前に立っていた…。


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