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理想と偽装の向こう側

第12章 板ばさみ

「まだ、分からない!今日次第かも!」



妙に力が入ってしまう



「…分かったよ。」
「じゃ…。送ってくれて、ありがとう…またね!」



私は車から出ようとしたが、嘉之は握った左手を強く握りしめ



「香織!」



その声にビクッとしてしまう



「な…なに…。」



「色々、待たせて悪かったな…。でも俺…香織なら待っててくれると思ったからさ。」



なっ…どうゆうこと…。



「ま…待たせたって。」



心臓が凄い勢いで、脈打っていく。



嘉之は、少し笑い



「メールするよ。」



そう言って私の手を離した。



「またね!」



バタンッとドアを閉めて、私はアパートに駆け込んだ。 



どうしよう!どうしよう!!
このままだと確実に、イタリアに拉致られる!



同時に小田切さんの顔が浮かぶ。
小田切さんが待ってる…早く戻らないと!



10分くらい様子見をして、駆け足で小田切さんのマンションに向かうが、頭はパニックだった。



もし、小田切さんに話したら、何て言うかな…。



私は、小田切さんのことで頭いっぱいで、冷静さに欠けていて、周りがよく見えていなかった…。




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