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理想と偽装の向こう側

第12章 板ばさみ

嘉之は、シートベルトを外して窓に手を着き、私をシートで挟む様に身体を寄せて来た。 



「なっ!ここ駐車場!」



「人いね~し!ここでヤりはしないよ。部屋、上げてくんないの?」



「し、したいって…。」
「sex…。」



嘉之は面と向かって言ってのけ、私は一気に顔が赤くなる。
とにかく、逃げなきゃ!



「ご、ごめんっ!!今日、本当に無理!指環ありがとう!」 



私は、ドアを開けて出ようとしたが、オートロックで開かない様になっていた。



「ははっ!じゃあ、今度ゆっくり時間作ってよ。」



「…う、うん…今日は、いいかな。」



「溜まってるけど、我慢するわ~!」



てか、半年会わないようにしたの自分じゃん!
私がどれだけ不安だったかなんて知りもしなで…



「じゃ…開けて…。」



「キスしてよ。」
「え…?」



さっきまでの雰囲気とは、違い真面目な顔で言ってきた。 



「香織から…キスして。」
「…っ!」



思わず息を飲む。



前の私だったら照れ臭さいっぱいでもしてたと思う…でも今は、小田切さんに気持ちが向いてるのに、別れようとしてる嘉之にキスなんて出来ない。



でも、拒否したら何が起きるかも分からない…。



今時点で、私に選択肢は無かった…。


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