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理想と偽装の向こう側

第12章 板ばさみ

けど…少し抵抗してみよう…このままだと、嘉之と別れることは不可能になりかねない。



「なっ!からかってるんでしょ~!」



「なんで…からかう必要あんの?」



前だったらキレてたかもしれない…でも、嘉之は静かに低く答えてきた。



「ずっと我慢してたから、俺からすると、歯止め効かないよ…。」



「あ…そんなこと…。」



「じゃ、ここでヤってもいい?」



なっ!ほぼ脅しだ!
でも、嘉之なら本当にお構い無しでヤりそうだ…。



「わ…分かった…眼瞑って…。」
「もちろん。」



不敵に笑いながら、瞼を閉じる。
私は嘉之の背中に腕を回して、そっと唇を重ねた。



十秒くらいの触れるだけのキスなのに、胸が鈍く痛む…。



この痛みは、確実に小田切さんへの気持ちなんだと実感してしまう…。



少し離し



「も…いいかな…。」
「足りねぇ!」



「えっ!んふっ…。」



嘉之は私の頭に手を回して自分の口元に強く押し当て、唇を割ってきた。


やっぱりな――――予想はしていたが、切なくなる。


騙されたと思ってない――――抗えない自分の愚かさが、悔しかった。


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