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理想と偽装の向こう側

第15章 発動

約一ヶ月が過ぎた。



あれから嘉之からは、パッタリ連絡がこなくなり、嵐の前の静けさに感じながらも、穏やかに日々を過ごせていた。



「渡辺さん、来週の予定なんだけど。」



井関さんに声をかけられ、手帳を持ってデスクに向かうと



「来週ですか?」



「そう、金曜日なんだけどお昼にランチミーティングをする予定なんだけど、渡辺さんは必ず参加してもらいたいのよね。大丈夫かしら?」



「はい!特に予定はありません。ちゃんと出社します。」



「良かったわ。トランスさんとのミーティングだから、穴は空けられないから、宜しくね!」



え…トランスポートと…。



「トランスさんとのミーティングなんですか?」



「そうなの、でも広言しないでね。色んな絡みがあるから。」



そう言って井関さんは、人差し指を口元に持ってくる。 



「はい!分かりました!」



元気良く返事は、したものの…正直内心は気が気じゃない。



嘉之が、動き出したんだ…。 



根拠のない確信が湧いてくる。



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