テキストサイズ

理想と偽装の向こう側

第15章 発動

「嘉之…。」



今日の今日で…よりにもよって、なんだろう…。



「はぁ…うっ…。」



ため息と共に、また吐き気がしてきた。



口を押さえながら、メールを見る。



『来週の打ち合わせ、俺も行くから。』



それだけだった…。



でも、効果はてき面だった。



これで、来週の金曜日まで1日1日が近付くにつれて、呪いのように恐怖で支配されていく。



『嘉之…羨ましいよね…。』



『香織んの心から、絶対、離れる事ないじゃん…。』



さっき言われた言葉が、脳裏を掠める。
小田切さんには、そう思われてるんだ。



一気に負の感情に、引き摺り下ろされる。



束の間の温かい時間も、消し去られていく。



「くっ…ん…。」



そして、また吐いた…。



固形物は出てこないのに、胃がひっくり返るように引きつき、胃液で喉が痛い。



「ふっく…ひっ…。」



どうすれば…いいの?



私はお腹を押さえながら、床に泣き伏した…。


ストーリーメニュー

TOPTOPへ