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理想と偽装の向こう側

第15章 発動

「そんなに調子悪いなら、早いところ原因突き止めて、薬もらわないと!」



あ…病気だと思ってるのは、分かった。



けど、調べてたら必ず吐き気の原因は、バレてしまう…小田切さんだけには、知られたくない。



「分かった…ちゃんと調べるから、今日は待って…。」
「香織ん!」



うっ…本当に引かない…。



「明日!会社の掛かり付けに行って来るから!」



「…分かったよ。必ず行くんだよ…。」



はぁ…とりあえず一段落かな…そして私たちは、電車に乗った。



乗った車両は、空いてる席があり二人分ちょうどあったので、小田切さんと横並びで座った。



電車から同じ風景を見ながら、同じ方向に帰ってるのが、不思議だな…。



「小田切さん…仕事、忙しいのに早く上がって来たの?」



「あ~、仕事は、何とかなるもんだよ…。」



簡単には言うけどさ…本当は大変なんだろうな…。



そんなこと気にしながら、二駅目で車内は一気に混んできた。



帰宅時間帯で立ってる人は疲れが増しそうだな…と、考えてると小田切さんが、立ち上がって




「ここどうぞ。」



ニッコリと席を譲った。



妊婦さんだ。


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