テキストサイズ

理想と偽装の向こう側

第15章 発動

「すみません…ありがとうございます。」



臨月近くになるのか、結構大きなお腹を大事そうに抱えながら座ろうとする。



満員電車で人が押し合う中、小田切さんは動きやすい様に、スペースを作ってあげていた。



その女性は、私の隣に座る事になる。



「ありがとうございます。」



その女性は、一息付いて、お腹を擦りながら穏やかな表情になる。



あぁ…母親の顔…。



今、お腹の中で一番大事なモノが育まれてるんだ…。



私も、こんな風に出来るのかな…。



そんな妊婦さんを微笑ましく見詰め小田切さんが、話しかけいた



「ご予定いつなんですか?」



「来月なんです。」



嬉しそうに答える。



「そうなんですか!楽しみですね!」



「はい!」



「元気な子、産んで下さい。」



「ありがとうございます。」



私は、そんな二人のやり取りを若干の痛みを感じつつ聞いていたけど、殺伐と混み合う車内に、穏やかな空間が出来ていた…。


ストーリーメニュー

TOPTOPへ