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理想と偽装の向こう側

第16章 懐古

『器用貧乏』と、よく言われた。
独り暮らしでも、特に困らない。



どっかで、独りの方が楽だとさえ思ってしまう。



その反面、どうしようもなく誰かを愛せたらとも思う…。



身体も頭も一つなのに…この二面性は何なんだろうか。



結局、俺は弱い人間なんだろう…。



どこか傷つきたくなくて…。
どこか寂しくて…自分で自分が面倒だ。 



こんな自分を壊してくれる存在が現れたら…変われるかな…。



そんな事を考えながら、アパートの方向にある、川に架かった橋を渡ろうとしたら…



「よっしゃっ!」



と、武道の型でも始めるかのような子が、橋の真ん中で叫んでいた。  



こんな所で、何してんだ?



その子は、こっちに向かって歩いてくる。



インパクトもあって、つい目がいってしまい一瞬目が合い、気まずい顔をしている。



「クスッ…。」



口元に手を当てたが、軽く笑ってしまった。



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