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理想と偽装の向こう側

第16章 懐古

盛り上がって話をしてると、あっという間に時間が経っていた。



「じゃあ。そろそろ帰ります。」



「本当に有難う。また、娘に会いに来てね。」



奥さんは優しく笑いながら、また誘ってくれた。



「はい。」



「小田切、下まで送るよ。」



「サンキュー!でも、大丈夫だから。」



見送ってくれようとした滝島に、軽く手を上げて断り、視線を奥さんと娘に流すと、腐れ縁だけに察して



「サンキュー!また来いよ!」



「ああ!楽しかったよ。」



滝島夫妻に見送られながら、部屋を出て駐車場に戻る際に来た道順で歩いて行く。



正直、病院と駐車場の位置関係は把握したから、最短距離も分かっていた…。



俺は、敢えて小児科の近くを通ってみる。



さっき子供たちが遊んでいた場所には、もう誰もいなかった。



「時間…経ってるからな…。」



そう自分に言い聞かせるように呟いたが、どこか心残りがあった…。



諦めて、駐車場に向かおうとした時…



「あれ?小田切さんですよね!」



声の主は、水越光花だった。


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