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理想と偽装の向こう側

第16章 懐古

子供たちを病棟に帰し、俺たちは庭先のベンチに腰掛けた。 



「仕事中に、ごめんね。」



「あっ!全然大丈夫ですよ!休憩中なんで!」



両手を広げ左右に振りながら必死に気を使う。



あぁ…一つ一つが、一所懸命なってしまうんだろうか。


 
そう思ったら、小さな胸の痛みを感じた。



俺もいちいち反応し過ぎだよな…本当に病気かも…。




時間を取らせるのも悪いから、ストレートに言ってみよう。
遠回しな言葉や手段より、多分その方が彼女には、伝わるような気がした。



「水越さん…明日の休みって何か用事ある?」



「明日ですか…?」



座っても明らかに小柄な彼女の大きな黒目がち瞳が、俺に向けて上目遣いになる。



ヤバい…超可愛い…。



「ないです。家でのんびりしようと思ってましたから。」



ニッコリ笑いながら、答える彼女の言葉に、よっし!と気合いを心の中で入れ



「もし良かったら…俺とご飯食べにいかない?」


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