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理想と偽装の向こう側

第16章 懐古

夕暮れになり、辺りが朱色に染まる時刻。



街中を少し離れると、公共施設と隣接した、広い公園があった。



花壇やら噴水もあって、景色は綺麗だった。



一応、さっきどさくさ紛れに次の約束は、取り次げたが、今日1日で彼女の天然ぶりは痛感した。 



何処からともなく、トンビが現れるか分かったもんじゃない。



出来れば、一気に勝負してしまいたかった。



「水越さん、ベンチ座ろっか。」



「はい!ここ、お散歩にいいですね!」



これから、俺が告るなんて微塵にも思ってなさそうに、自然体で微笑む彼女…。



今日は俺の方が、ずっとドキドキさせられてたに違いない…。
最強かも…。



ベンチに腰掛け、しばらく無言になる。



俺は、緊張を取りたくて沈黙を破った。



「今日…本当に有り難うね…。水越さんと、過ごせて本当に楽しかった。」



大した台詞でもないのに、大舞台に立ったような気持ちになる。 



そんな俺を水越さんは、黒目がちの大きな瞳で、じっと見詰めながら口を開く…。



「滝島さんがね…」



えっ!!滝島!?
何で??


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