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理想と偽装の向こう側

第16章 懐古

月曜日

「コツンッ。」

デスクに俺のマグカップが置かれた。



「小田切さん、お疲れ様です。」



「佐伯さん、ありがとう。」



俺は、パソコンを叩く指を一端止めて、笑顔でお茶を淹れてくれた女性社員にお礼を述べる。



佐伯さんは、デスクの上に新たに加わった存在に気づき



「このペパーウェイト綺麗ですね。」



「あっ!気付いた?プレゼントでもらったんだ。」



俺は、昨日水越さんがくれたウサギのペパーウェイトを、会社の方が常に眼に入ると思って持ってきていた。



「プレゼント…?随分、可愛らしいモノを…妹さんとかいるんですか?」



「えっ?妹はいないよ。彼女から。」



『彼女』…そんな言葉に、胸の奥がジ~ンとなってる俺の前で佐伯さんは、



「えぇっ!彼女!!」



「へっ?そう。」



俺、何か驚かせる様なこと言ったかな?



「小田切~!!こないだの仕事の報告聞いてないぞっ!」



そのタイミングで、滝島が割り込んで来た。



「なっ!オマエに報告する事なんて、無いだろ。」



淹れてもらったお茶を飲みながら、訝しげに滝島を見る。



「あるだろ!最大プロジェクトだろうが!水越案件!」



「ぶっ!」



思わずお茶を吹いてしまった。 



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