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理想と偽装の向こう側

第16章 懐古

良くぞ、我慢した!自分っ!
それこそ、せめてもの自画自賛…。



「次…?」



水越さんは眼を開き、ぽや~となって呟く。



「また、次の休みに会おうね。今日は、早く寝た方がいいよ。」



状況が若干、のみきれてなさそうだが、素直に俺の言葉に応える。



「あ…はい。分かりました…。」



「足下、気を付けてね!部屋まで行ける?」



水越さんは、まだ少しぼうっとしながら



「はい…大丈夫です。」



コクンと頷いた。



部屋まで送ってあげたいけど、俺も色んな意味でギリギリだった。



「また、連絡するね。今日は、楽しかったよ。」



水越さんは、嬉しそうにニッコリ微笑みながら



「はい!私も楽しかったです。小田切さん、ありがとう。」



と言った、当たり前のような感謝の言葉が、彼女に言われると殊更、特別に聞こえてしまう。



何とか抑え込む欲望を彼女の額に唇を押し当てた。



「お休み…。」



「はい…お休みなさい。小田切さん。」



可愛く囁いた彼女の声が、耳に残る…。



俺…今日、寝れるかな…。



水越さんを見送りながら、大きなため息を吐いた。


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