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理想と偽装の向こう側

第5章 トラウマ

「あ…小田切さん、待たせちゃうよね。」


ふと、我に返る。



もう一度忘れ物がないか見渡して部屋を出ようとして振り返る。



「忘れ…られるよね…。」



額縁の山が、私の愚かな恋愛の象徴そのものだった。



********



アパートの入り口に小田切さんは、車を付けて待っていてくれていた。 



「すみません!お待たせしました!」



「よっし!先ずは荷物を置いて来て、そしたら焼き肉だ!」



「はぁ~…焼き肉…。」



何か色んな事が一足飛びしてないかな?



「香織ん、焼き肉嫌?」



「いいえ!そんな好き嫌いないですし、久々だから楽しみです…けど…。」



「けど?」



「…匂い着くかなって…。」



そう言って誤魔化したが、世間で言う
『焼き肉屋に行く男女の関係』
と、やらがひっかかったんだよね。



「気にしなくていいじゃない、明日も休みだし、帰って寝るだけだし。」



「そうですよねぇ~!」



…考え過ぎだよね…私。

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