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理想と偽装の向こう側

第16章 懐古

「光花、明日どこか行きたいところある?」



希望を聞くと、光花は俺ジッと見詰めて



「うん…特にないかな…。」



意外な言葉にちょっと驚く



「えっ?折角時間あるから、遠出も出来るよ。」



「うん…折角時間あるから…志信さんと、ここに居られればいいかなって…。」



うっ!
嬉しいけど…1日ここで二人でいたら、逆に拷問だ…キスだけで我慢出来る、自信ないよ…。
俺は冗談ぽく



「そんな事言ったら、1日中抱き締めちゃうよ。」



「えっ!」



光花は、驚いた様に瞳を見開いた。



ほら…そこまで考えては、なかっただろ…。



すると光花は



「本当に…?ずっと抱き締めてもらえるの?」



「えっ?」



立場が逆になる



「凄い…夢みたい…。」



少し俯き加減で、光花は微笑みながら呟いた。



カタッン…。



俺の中で、箍(たが)が外れた音がした…。



「光花…おいで…。」



「ん?うん。」



光花が差し出した俺の手を握って立ち上がった瞬間…胸の中に引き込んだ。


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