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理想と偽装の向こう側

第18章 永久と再会

「俺、小田切志信!君は?」



彼女は、動揺を露にしながら名乗った。



「わ、渡辺…香織…。」



渡辺香織。



それが、君の名前…。



この時点で、光花への想いが消えた訳じゃなかった。



渡辺香織と、前向きに未来を見詰めようと思った訳でもない。



ただ、俺自身も『傷の舐め合い』が、どうなるかなんて解っちゃいなかった。 



それは…とても甘く甘く、嵌まったら抜け出したくないスパイラルだった。



俺は、立派な人間じゃない。



どうしようもなく、カッコ悪く、愚か者だ。 



君が作った純粋な傷の痛みを麻薬の様に鈍らせて、惑わしていく。



ねぇ…それでも君は側に居てくれるだろうか?



こんな俺に気付いたら、きっと君は居なくなるんじゃないかな。



光花が一瞬で、目の前から去った様に…。


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