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理想と偽装の向こう側

第5章 トラウマ

小田切さんは、私の頭をポンポンと軽く撫でる。



そうされると胸の辺りが温かくなり、少し落ち着いてきた。 



「俺は、彼に会ったことないから意図は分からない。香織んを必要じゃなかった訳でもないかもしれない。でも最終的には、香織んは自分を責めてるんだろ?」



「…はい…。私が…もっと心広ければ…彼のこと温かく見守っ…ふっ…。」



言い終わらない内に、涙が勢いよく流れだす。



「無理…するな…。」



そう言って小田切さんは、助手席にいる私の頭を胸元に引き寄せ、さっきの頭と同じく背中を一定のリズムでポンポンと擦ってくれた。



分かっている、そんなの『偽善』なんだ。



私は自分がやってきたことを無駄じゃなかったと思いたいだけ…。



小田切さんも、それを解ってるんだろう…。


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