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理想と偽装の向こう側

第20章 さよなら

水曜日

久々にPiazzaに来た。



妊娠疑惑も晴れたので、心置きなくお酒が飲めるが、胃炎が善くなるまでは、そんなには飲めないし、目的は黎子に報告を兼ねてだった。



「ほら!そんな事だと思ったわ。だから早く調べなさいって言ったのよ!」



「すみません…黎子、もしかして気付いてたの?」



相変わらず、ハイネケンを飲みながら黎子は



「最初…うちに来た時にね。もしかしたらとは、思ったのよね。」



「えぇっ!最初から!どうして分かったの?」



「あんたが、うちに来た私が何をしてたか、覚えてる?」



「えっ…う~んと…。」



黎子があの時してた事…。



「夕飯の支度をしてたような…。」



「正解。ご飯も焚いてたし、食べ物の匂いが立ち込めてた割には、香織一回も吐き気がなかったのよね。ご飯を焚く匂いって、大抵のつわり中の人は、苦手みたいよ。まあ、統計的にだけど。」



「そこまで分かって何で~?」



「素人判断なんて出来ないでしょ!だから早く調べてスッキリしろ言ったじゃない!」



あっ…確かに。



だから黎子は『大丈夫』って言ってくれたんだ。 

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