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理想と偽装の向こう側

第20章 さよなら

「ひっく…。」



涙がボロボロと、眼から落ちる。



震える手を一旦、両手で握り落ち着かせようとするが上手くいかない。



「はぁ…。」



鼻が詰まって息苦しい…怖い…。



でも、言うこと聞かないと何されるか解らない。



「ちゃんと…約束…守ってくれるの?嘘じゃない保証あるの?」



嘉之は腕を組んで壁に寄りかかりながら、テーブルの上の携帯に視線を向け



「会話…全部録音してあるから、証拠にすればいいよ。」



録音…こんな時まで、そんな事に頭回るんだ…。



本当に逃れられない、気がする…。



「はぁ…ぐすっ。分かった…。」



ヒック、ヒックとしゃっくりの様に、嗚咽が出てしまう。



一つ目のボタンを外し、二つ目に指を掛けようとした時…嘉之の手が胸元に伸びてきた。

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