テキストサイズ

理想と偽装の向こう側

第20章 さよなら

ビクンと、身体が硬直する。



「な、何よ…!」



悲鳴に近い声に、なってしまう。



「そんなに…怖いか?」



「え…。」



嘉之の顔が、間近に迫り



「二年間…ずって待っててくれたのに…受賞した時、あんなに喜んでくれて、プロジェクトの締め切りの時は、忙しいのに…毎日身の回りの事してくれて…出来上がった作品を泣きながら一緒に感激してくれたのに…あれ全部チャラにすんのかよ…。」



「嘉之…。痛っ!」



私の手を力入れて、握ってくる。



「全部チャラにして…小田切に行くのかよ…!」 



「痛い…。嘉之…手、離して。」



「そんなに小田切が…大事なの?」



何て答えれば…素直に言ったら、何仕出かすか解らない。



「お願い…。言う事…訊くから…小田切さんには、何もしないで…お願いします。」



涙が次々に溢れ出したがら、必死に頼んだ。



「煩いっっ!!」
「きゃっ!」



「ドンドンドンッ!!」



嘉之の怒鳴り声と同時に、ドアを叩く音が響いた。


ストーリーメニュー

TOPTOPへ