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理想と偽装の向こう側

第20章 さよなら

小田切さんが、卵スープと餡掛け炒飯をテーブルに持って来てくれた。



「は~い!お待たせ~。」



「美味しそう~!」



「よっし!食べよう!」



「頂きまぁ~す!」



一口頬張ると、余りの美味しさにジタバタしてしまう。



「ん~!幸せ~!」



「はは!それは良かった。」



瞬間、昨日の安岡さんの言葉が蘇る



『渡辺さんは、渡辺さんの人生で幸せになってね!』



スプーンをくわえてぼうっとしていると、小田切さんに



「香織ん?そんな疲れてるの?」



と聞かれて、我に返る。



「はっ!大丈夫!美味しくてトリップしちゃった~!」



ははは~と笑って誤魔化そうとした私に



「また…嘉之に何かされたの?」



「え…嘉之…。」



瞬間、片方の眼から水滴が頬を伝う。



「香織ん?」



「なっ!何で…。」



すると一気に、涙が溢れだした。


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