優しくしないで
第9章 古傷
次の日…
病室のベッドで…
笑顔の奏に会った…
『耳…聞こえなくなっちゃった』
笑いながら…
奏は…笑っていた…
俺は…ホッとした
奏は、大丈夫だ!
奏は、強い奴だった!!!
そう、思った。
俺は、安心して
「もっと落ち込んでるかと思ったから、安心した。
早く退院しろよ」
と…いつもの調子で奏の頭をクシャクシャっとやった
「…?」
『……』
ポタ、ポタ…
奏の…瞳から…
大粒の涙が………流れ出す
『仁が…何…言ったのか…全然…聞こえない…
夢じゃ…ない…
無音だ……――――――』
俺は…背筋が…凍りついた
奏は……
聴覚が失われた事を…
俺で…自覚してしまったのだ…
今まで、音に囲まれてきた人生が…
無音の世界に…突き落とされた奏は…
泣き続けた…