優しくしないで
第15章 着色の一歩
〈…では、短くですか?〉
《ええ!!!》
〈原田様はお顔も小さいのでシヨートでも―――…〉
と…耳にかかっている髪を掬い上げると…
女性の耳は……
《ビックリした…?
私、生れつき耳が無かったのよ…》
〈ショート…だと…〉
《いいの!私…お母さんになるのよ?子供に解ってもらう前に…回りにも解ってもらわないと!
後…じろじろ見られる目線に、私自身が…慣れないと…》
〈原田様……
お母さんって……強いですね…〉
女性は、鏡ごしに俺に微笑んだ…
俺は、肩まである彼女の髪に…ハサミを入れた…
チョキン、チョキン…
床に落ちる…女性の過去の痕跡…
苦労し…苦悩し…諦めるた時の毛先…
パサ…パサ…
女性は指先のハサミを食い入るように見る…
ドンドン短く…
過去が切り離されて行く…
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