優しくしないで
第20章 走り出す
求人表の…真ん中…
たまたま、クシャクシャにならず…
シワから逃れた場所に…
見覚えのある…会社名…
太一が…
好んで使っていた…
陸上シューズを出している…会社…
私が、光一さんから譲りうけた…
無名のシューズの…会社…
いままで、求人が出ていなかった…
なのに…
『…私……ここの会社に入りたい…』
「ん…“株式会社、岩風”…ん?ここって…」
仁さんはプリントを見て…
時間差で…会社名にピンときた…
『はい、太一の形見のシューズのメーカーです…』
私は…ドキドキしていた…
この…会社に入りたい…
強く…強く…思った…
スポーツ関係なら…何処でもいいって…安易に考えていた部分があった…
運よく、就職できたら…
学校にも、両親にも…
自分にも………
陸上をやっていたと言う…
面目が保てると…
密かに思っていた…
でも……
そんな気持ちは見抜かれていたのか…不採用ばかり…
私に…どうしても、そこの会社に入りたいと言う…熱意は沸かなかった…
しかし…今は…違う……
この会社でなければ…いけない気がした…
『仁さん!!!
私!!!株式会社、岩風を受けます…』