優しくしないで
第20章 走り出す
力強い……私は…全てをぶつけた…
沈黙が続く…
一人の試験官が…履歴書をトントンと指差した…
スッと、真ん中の試験官が…両手を胸に持ってきた…
《君は、手話ができるのかい?》
私は…手話が始まりビックリしていた…
《ん?履歴書に書いてあるのは、見せかけかい?》
私は慌てて指を動かした。
《いいえ、解ります!》
《…嘘じゃなさそうだ…
しかし、独学か?》
《はい…知り合いから教わっています。
解りにくい手話で、申し訳ありません。》
《いや、クセはあるが…ちゃんと伝わる…大丈夫ですよ。》
《ありがとうございます》
《意地悪な質問をしてわるかったね。
我々も、いい人材がほしいからね。
しかし、君の友達は…事故死だったのかい?》
《世間体には…事故死ですが…
本当は……自殺です…》
《……そうか…悪かったね…辛いことを聞いた…
あっ…大丈夫だよ、両サイドの彼等は手話が出来ないから…秘密にしておくよ》
《…ありがとうございます…》
「さて、時間だ…澤口さんの熱い気持ちは解りました。
結果は後ほど郵送します。本日はお疲れ様でした。」
時間になったようで…
『ありがとうございました。』
私は頭を下げて会議室から出た…
扉が閉まり切る瞬間…
真ん中の試験官が…
《また、会いましょう》
と指が動いた気がした…