優しくしないで
第20章 走り出す
「では…澤口さん…
君は、高校1年まで陸上をやっていたんだね…
成績も優秀…
はぁ…ケガで…引退か……
で、陸上しかしてこなかったから…シューズメーカーを受験って所かな。」
履歴書や学校からの紹介文で…私の表面の人柄を意地悪くつつく……
嫌みをいい…表情や目の動きを見ている…
企業の面接は……ホントに厳しいと思う…
『はい。その通りです。
しかし、私はこちらのシューズは使っていません。』
試験官の眉がピクリと動いた…
「ほほう…使ってもいないメーカーを受験するとは…よっぽと不採用が続いたのですか?」
『不採用続きは、事実です。
ですが…御社の求人が最近出され、このタイミングで私が求人を見たのは…運命だと感じたのです。』
一瞬…静まり…
試験官三人は大笑いした…
「ハハハハっ運命っ?
ハハハハハ!!!すごい、メルヘンチックだね澤口さん」
『…夏に…陸上部の友達が…亡くなりました…
先月…彼のお兄さんから…形見として…シューズを受け取りました。
御社のシューズです…
彼は、ケガをした私を…どうにか陸上に復帰させようと…
力を尽くしてくれた恩人です…
私の足は……もう…復帰不可能だと…解っていてもです…
何も出来ず…ただ彼を悩ませたあげく…
彼は亡くなった…
私は…彼の愛したシューズとともに…成長していくと誓いました。
私を御社のシューズに…関わらせてください。
彼の愛用しつづけたシューズを…陸上を愛する人達の足に……届けるお手伝いをさせてください!!!』