優しくしないで
第24章 後ろ髪……
「…耳の傷大丈夫ですか?」
大さんが…紅茶の入ったカップを持ってきてくれた…
俺は…ハッと…我に帰った…
「…大さん…留美ちゃんは?」
「今日は帰るって、裏口から出て行ったよ?
まっ……仁の逢い引きは見たくないって乙女心だろ?」
留美ちゃん……
スタッフルームの方を見たが…
気配はなかった……
俺は……留美ちゃんの……
姿を……見ることが出来なかった事を……
後悔していた―――――…
追い掛けたかった…
でも、補聴器が壊れ…耳の不十な奏を一人置いて行けない……
それに……
留美ちゃんに……なんて言えばいいのか………
俺は……後ろ髪が引っ張られる思いを……
初めて味わった…
《奏…何故…俺に会いにきたの?》
『仁…』
《俺……奏に…酷い事…したのに……》
『………』
俺は……奏を…
助けず…逃げ出した……