優しくしないで
第8章 音のない夜
私は…太一との…
出来事を……
思い出していた
あの時…
太一を利用して、現実から逃げたことを…
今……後悔していた
後悔したまま……
頭の中は…真っ白で…
目から溢れる涙だけは止まらない…
私は仁さんの腕の中で、
無表情のまま…涙だけが流れ続けている状態になっていた
仁さんはギュッと私を抱きしめ…覚悟を決めてようにつぶやいた
「さっきの電話、剣君って子から…
太一君の遺体は…検診解剖してから自宅に…戻るって」
私の体は…
反応しなかった…
脳が…反応しなかった…
すると、反応のない私を…仁さんは更に強く抱きしめた…
「…考えるのを止めるな…怖いかもしれないが…考えるのを止めちゃいけないよ…留美ちゃんは…生きているんだから…」
あ………
私は仁さんの声に…ピクン…
と反応した…
仁さんに言われて…
気がついた…
私は…
考えるのを止めていた…
何にも反応しない…
生きた屍のようになっていた…
死んだのは…太一…
私…じゃ…ない…