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私はあなたを許さない

第28章 「私、この家には嫁ぎませんから」



希「あの」

栄治「すぐ近くだから」

希「そういう事じゃなくて…」


希の手を掴み
駅の階段を駆け登る栄治
振り払おうにも、がっちり掴まれていて
栄治も希の手をそう簡単には離して
くれなかった


光明「…」

希「飯田先生!!」

栄治「何?」

希「…」


偶然なのか
光明の目の前で立ち止まった希と栄治
だけど希も光明も、お互いまだ
気づいてない様子だった


希「…手離してください」

栄治「あぁごめんね、痛かった?」

希「そういう事じゃなくて…」

栄治「愛田さん?」

光明「!?」

希「…」

光明「愛田…」


行き交う人の中
聞こえてきた「愛田」という名字
愛田という名字は珍しく自分が知る限り
たった一人しか知らない
彼女しか…


光明「愛田さん!!」


声に出し
その名前を大声で呼んでみた
だけど光明の声は人込みに掻き消されて
しまい
希の耳に届く事は
なかった


光明「…愛田さん」


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