雨の人
第1章 突然の電話
rrrrr・・・
自宅の電話が鳴った
家には私ひとり
特に
ためらうこともなく
私は受話器を上げた
「はい、青山です」
「あの……ゆきさん・・
ゆきさんは
いらっしゃいますか?」
ちょっと緊張している様子の
その物言いに
私は、またか…
と、軽いため息をついた
「私が、ゆきですけど…」
「あ、僕、川村と言います」
「あ、はい…」
「あの、突然ですみません。
付き合ってる人…
ゆきさん
今、付き合ってる人いますか?」
あ~…やっぱり。
学生の頃は、こんな電話
たまにあったけど
社会人になってからは
久しぶりだな…
私が、少し沈黙していると
川村と言うその人は
話を続けた
「あの、すみません、突然。
あの、もし、
もし付き合っている人が
いなかったら…
僕、立候補したいんです。
それで、電話してしまって…
すみません、突然…」
「あの…ごめんなさい。
私、今付き合っている人
いるんです。
だから
申し訳ないんですけど…」
こーゆー電話は、
敬語を使ってお断りし
早々に電話を切るように
していた私は、
いつものように
電話を切る方向へと
話をつなげようとした
すると
「あ、そうですか・・
わかりました
付き合っている人が
いるんですね…
仕方ないです。
あっ!
でも待って下さい!!
電話、切らないで下さい
付き合って下さいとか
もう言わないので
少しだけ…
少しだけ僕と
話…してくれませんか?」