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雨の人

第6章 キスの先にあるもの

『ん?…
……え?…あっ!!
ゆき、見つけちゃったの?』



ゆきは、黙ってうなずいた



『ゆきのだよ!
あれは、ゆきのなんだ。

大丈夫だよ、ゆき?』



ケーキとは別に
俺が用意したゆきへの
プレゼント

驚かせるつもりで
コートのポケットに隠して
仕事へ出かけたんだ。


ゆきは、
自分のコートを車の中に
置いてきてしまい

そばのコンビニへ行くとき
俺のコートを着たらしい。

そこで
ポケットのプレゼントを
見つけてしまったんだ。



『だって、あきひろくん…

ケーキがお返しだって
私に渡したから…

もう帰る時間なのに
何も言ってくれなかったし…

ゆき
不安になっちゃって……』



俺は
ポケットの中の
小さな包みを
ゆきの
手のひらの上に置いた。



『驚かせるつもりだったんだ

ごめんな、ゆき』



ゆきは
『ホント?…』
と言って
俺の目を見た。



プレゼントは
ボールチェーンのネックレス。

俺からゆきへの
はじめてのプレゼントなんだ



『ホントだよ。

それから…

帰る時間なのに

まだ渡さなかったのは…』




と言って、

ゆきを抱きしめ

俺は

深く長いキスをした。




安心したのか

ゆきの体から

だんだん力がぬけていくのが

わかる






『俺……



今日ゆきを…


帰したくなかったんだ』







『川村さん…


…ゆきも……





帰りたくない…』

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