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雨の人

第6章 キスの先にあるもの

ケーキを食べながら
じゃれ合う間
ゆきは、いつもの笑顔で
機嫌よくしていた


でも
時間がたつにつれ
なんだか少しずつ
ゆきは、元気が
なくなってるみたいだった


慣れない料理で
疲れたのかな…


『ゆき?疲れた?
料理大変だったんじゃないか?』


『ううん、大丈夫だよ。
料理作るの楽しかったよ。
ゆきは平気』


と、笑顔を見せるゆきを
俺はそっと抱き寄せた


『料理、全部おいしかったよ
ゆき、ありがとう。
俺、すごくうれしかったよ。
ホワイトデーは
俺がお返しする日なのにな…
ありがとな』


ゆきは、小さな声で


『ゆきが、したかったから…
だから、気にしないで』

と言って、俺の背中に手を回した
たまらなく愛しい
俺は、ゆきの髪を
優しく撫で続けた




すると、ゆきが

小さく体を震わせたんだ




ん?ゆき?

あれ?

ゆき、泣いてるのか?




俺は、ゆきからそっと体を離し


『どうしたの?
ゆき、泣いてるの?』


と、ゆきにたずねた


『なんでもないの

ごめんなさい』


と言ったあと

ゆきの目からポロッと





涙が落ちた




『ゆき、泣かないで、ゆき?』




指で、ゆきの涙をぬぐいながら
俺はどうしたらいいのか
分からなくなってしまった
ゆきは、何で泣いちゃったんだ?



するとゆきは


『誰か…他の人にも…
チョコもらったの?』


と俺の目をみた


『ゆきだけだよ。
ゆきからもらっただけだよ?』


何か言いたそうな顔のゆきに
もう一度


『どうしたの?
ゆき、俺…何かした?
ちゃんと謝るから
何かあるなら、言って?』


と伝えた。


すると
しばらく黙っていたゆきが
ふと、俺のコートを指差した。

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