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月琴~つきのこと~

第3章 第二話 【月琴~つきのこと~】 一

 だからこそ、また、嘉平太は妙乃に指一本触れようとさえしないのだ。
 そう考えれば、すべては辻褄が合う。
 今夜、祝言が賑々しくも厳かに行われた後、若夫婦は寝所で二人だけになった。祝言の行われた大広間ではまだ親戚の某の調子っ外れな祝い歌が続いているらしく、皆のはやし立てる声が遠く響いていたが、屋敷の中でも特に奥まったこの辺りはまるで広間の騒ぎが嘘のように静まり返っていた。

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