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月琴~つきのこと~

第3章 第二話 【月琴~つきのこと~】 一

 初めて男に触れられる恐怖に慄えていた自分が滑稽なようにさえ思え、妙乃はやり切れない想いを抱えていた。肩透かしにあった腹立ちの方よりも無視された惨めさの方が大きかった。所詮、自分は姉の身代わり―、いや、身代わりにすらなれないのだと思った。
 突如として行方知れずなって三年が経ち、その生死さえ定かではないというのに、小文は今もなお人々の、嘉平太の心に棲みついている。

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