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月琴~つきのこと~

第4章 第二話 【月琴~つきのこと~】 二

 もっとも、嘉平太は人前で妙乃を無視したり冷たく粗略に扱ったりしたわけではない。
誰にでも見せるいかにも優しげな物言いと穏やかな物腰は妙乃に対しても変わらず、声を荒げて怒るということもなかった。大和屋でもよく仕込まれていたと見え、商いの才覚もあり、やり方もよく心得ている。姉小文を失ってから、めっきりと老け込んでいた父惣右衛門は「良い聟を貰った」と漸く愁眉を少し開いた。

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