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月琴~つきのこと~

第4章 第二話 【月琴~つきのこと~】 二

「いくら想っても、私の心は、あなたには届かない。それでも、私はあなたを好きになってしまったのです。いいえ、昔から―、姉の許婚者であったあなたをお慕いしておりました」
 それは思いがけぬ言葉であったらしく、嘉平太が愕きに眼を見開いた。許婚者の間柄であったとはいえ、小文と嘉平太が二人きりで逢ったことはほんの数えるほどで、嘉平太が信濃屋を訪れたのもわずかであった。

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