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月琴~つきのこと~

第4章 第二話 【月琴~つきのこと~】 二

 その熱い手のひらの感覚を、妙の肌はちゃんと憶えている。妙乃の内心の狼狽を知ってか知らずか、嘉平太は相変わらず淡々とした調子で続けた。
「私は信濃屋を守りたかった」
「うちの店を守る―?」
 妙乃はその台詞の意味を咄嗟には計りかねた。
 顔を上げると、嘉平太と真正面から見つめ合うことになったが、もう顔を背けたりはしなかった。

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