テキストサイズ

月琴~つきのこと~

第4章 第二話 【月琴~つきのこと~】 二

 妙乃の訝しげな面持ちに、嘉平太は頷いた。
「亡くなった小文さん、いや、義姉(ねえ)さんはああ見えて、責任感の強い女性(ひと)だった。大旦那が義姉さんにこの店の身代を継がせたがっていたことは十分承知の上での駆け落ちだったろうから、恐らく、何もかもを棄て大切な家族を哀しませることも覚悟していたろう。義姉さんはそれだけの覚悟をして、その男を選んだんだ。だから、私は今更、その選択についてとやかく言うつもりもないし、義姉さんを恨むつもりもない。ただ、―」
 そこで嘉平太は短い息を吐き、妙乃を見つめた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ