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月琴~つきのこと~

第4章 第二話 【月琴~つきのこと~】 二

 そう言えば、今宵は十五夜であった。
 信濃屋の庭には秋の盛りの今、姉の愛した萩や吾亦紅(われもこう)が花開き、紫式部が艶(つや)やかな小粒の実をつけている。いずれも姉が丹精した花々であった。
 嘉平太と共にこの店を、姉の愛したものを守ってゆこう―、妙乃はこの時、心からそう思った。

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