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月琴~つきのこと~

第4章 第二話 【月琴~つきのこと~】 二

 妙乃の声が慄えた。
「本当に―?」
 その形良き眼(まなこ)から透明な雫が溢れ落ちた。
「ああ」
 嘉平太が妙乃の瞳を見つめ、淡く頷いた。
「本当に、私だけを見て下さいますか」
 応える代わりに、嘉平太の逞しい腕が妙乃を抱き寄せた。ためらいがちに華奢な身体に回された手の温もりが愛おしかった。
 嘉平太の胸に顔を埋め、妙乃は泣いた。

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