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月琴~つきのこと~

第1章 第一話【宵の月】 一

 小文の父は京の都でも指折りの大店「信濃屋」の主惣右衛門で、屋敷内では大勢の奉公人が立ち働いている。ゆえに小文が無理に働かなくても身の回りの世話でさえお付きの女中がしてくれる。言わば、恵まれた大店のお嬢様である。その割には、小文は取り澄ましたところもなく、下々の奉公人にまで気さくに話しかけた。

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