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月琴~つきのこと~

第1章 第一話【宵の月】 一

「―!」
 今度は小文が愕く番であった。治助が哀しげに笑った。その笑顔は三日前とは違い、何とも淋しげだった。
「俺は嬉しいんですよ。ひとめ見た時、俺もお嬢さまに惚れました。お嬢さまが俺に気づく前から、何て綺麗なひとだろう、まるで天の羽衣を置き忘れた天女さまのようだと本気で思ったんです。それで、つい我を忘れて見惚れている中に手代さんに見つかってしまいました」

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