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月琴~つきのこと~

第2章 第一話【宵の月】 二

 嘉平太と共に芝居小屋を出てからも、小文の心の中は先刻見たばかりの芝居の一幕が灼きついて離れなかった。
 亭主ある身の大店の内儀と職人の道ならぬ恋―、小文にはそれがあたかも我が身と治助の秘められた恋のように思えてならなかった。
―自分たちはこの世で幸せになることはできぬのなら、いっそ来世で比翼の鳥、連理の枝となり添い遂げよう。

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