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月琴~つきのこと~

第2章 第一話【宵の月】 二

 自分のように凡庸な取るに足りない男には勿体ないほどの女だと思う。十五歳という若さながら、大店の跡取り娘という立場をよく理解し、健気にも信濃屋の身代をそのか細い肩に背負い、全力で守ってゆこうとしている。その姿にいじらしさを感じ、生涯大切に慈しんでゆきたいと思っている。
 今は隔てがある間柄でも、所帯を持ち夫婦となれば、また自ずと情が通い合うこともあろうと、嘉平太は楽観的に考えていた。

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